バッテリーのスプリングトレーニング開始まで1週間を切りましたので、投手陣を先に見ておきます。今日は、先発。
先発ローテーションの崩壊が、昨年のナショナルズの最大の敗因でした。ざっとデータを見ると、先発投手のチーム防御率5.11はナ・リーグ15位、WHIP は14位、奪三振数は最下位。投球回数も最下位で、1試合あたり5回1死を取れずに降板。当然ながらQSも伸びず、これも15位。
つまり、先発投手が全く役目を果たせなかったということです。これが、投手有利と言われていた広いRFKスタジアムを本拠としたチームの成績です…。チーム最多勝は中継ぎのジョン・ラウチ(8勝)に奪われ、先発に限れば
マット・チコ(Matt Chico)の7勝が最多でした。
こんな成績になった大きな原因は故障(せめて故障のせいにしたい)。開幕投手
ジョン・パターソン(John Patterson)、2番手の
ショーン・ヒル(Shawn Hill)がともに5月上旬にDL入り。パターソンはそのまま手術を受けてシーズン終了。他にもけが人が続出し、シーズンを通してローテーションを守ったのはチコただ1人でした(夏場に調子を落とし、2試合だけAAAで調整しましたが)。
そして迎えた今オフでしたが、フロントはたいした動きもせず、ヤンキースとのトレードで
タイラー・クリッパード(Tyler Clippard)を獲得した程度。放出した投手もほとんどいません。したがって、今季の先発投手陣を占うポイントは、いかに健康でいられるか、若手中心の現有戦力がどれだけ成長できるかです。
まず昨シーズン故障に苦しんだ1、2番手の調子が気になります。パターソンは05年に185三振を奪ったようにゲームを支配するだけの能力を持っており、本来ならエースとして引っ張っていくべき投手です。ヒルも16試合の先発に限られたものの、防御率3.42、WHIP1.14とチームでは抜群の安定感を示していました。スプリングトレーニングを前に聞こえてくるところでは、「体も腕も心も全てに手応えを感じている。集中できているし、この4、5年で一番手応えを感じている」(パターソン)、「100%で行ける状態」(ヒル)とのこと。順調なら、この2人が先発の柱になるでしょう。というか、なってもらわないと困ります。
3番手以降は、若手の成長に期待したいところです。熾烈な競争が予想されますが、チコ(24)、ジェイソン・バーグマン(26)、ジョエル・ハンラハン(26)、クリッパード(24)、ジョン・ラナン(24)、コリン・ベイルスター(22)といったところが候補です(ちなみにヒルも26歳)。
昨シーズン孤軍奮闘した左腕のチコ。06年のシーズン中にリバン・ヘルナンデスとのトレードで、やはりプロスペクトのギャレット・モックとともにDバックスから移ってきました。07年は、4月にメジャー初登板を果たし、そのまま1年間頑張りましたが、四球が多いなど安定感に欠け、まだまだ伸びる余地はありそうです。経験を生かして飛躍できるでしょうか。
ジェイソン・バーグマン(Jason Bergmann)は順調に育ってきた生え抜きで、昨シーズンから先発に定着しました。DL入りも経験しましたが、十分にメジャーで通用することを証明しました。特に9月は好投し、5試合に先発して4勝0敗、防御率3.73という安定した投球を見せました。今年はシーズンを通じての活躍を期待したいところです。
ジョエル・ハンラハン(Joel Hanrahan)は06年オフにドジャーズから解雇されナショナルズと契約。07年はAAAでまずまずの成績を残し、7月末にメジャーデビューを果たしました。イニング数に近い数の三振が取れる投手です。今シーズンはブルペンか、という話も聞こえています。
クリッパードは昨年ヤンキースでメジャーデビューしましたが、ちょっと早かったという声も聞かれます。打ち込まれて早々にマイナーに落とされてしまいました。被本塁打が多いのが気になります。
ジョン・ラナン(John Lannan)はマイナーで好投し7月にメジャーに昇格したものの定着できませんでした。しかし、07年のチームのMinor League Pitcher of the Yearに選ばれたように潜在能力は高く評価されており、左腕ということもあってローテーション入りへの期待は大きいです。
AAAまで順調に育ってきた
コリン・バレスター(Collin Balester)にも、スプリングトレーニング次第では開幕メジャーの可能性があるでしょう。
他の候補としては、昨季マイナー契約からスタートしながらもローテーション入りを果たしたベテラン(といっても30歳ですが)の
ティム・レディング(Tim Redding)。ウィンターリーグで好投しマイナー契約を結んだ元オリックスの前川勝彦。 再建中のチームはどうしても若手にチャンスを与えようとするでしょうから、ロースターに残っていくにはしっかりした結果が求められるでしょう。
スプリングトレーニングには、他にも07年ドラフト1順目(全体6位)の
ロス・デトワイラー(Ross Detwiler)、同じく07年のサンドイッチピック(1順目と2順目の間)の
ジョシュ・スモーカー(Josh Smoker)、パワーピッチャーの
ギャレット・モック(Garret Mock)といった有望プロスペクトが参加します。おそらく早い段階でカットされて開幕はマイナーで迎えることになるでしょうが、デトワイラーは、既に昨年9月に1イニングだけとはいえメジャーデビューも果たしており、今シーズンのどこかのタイミングでメジャーに昇格する可能性も十分にあるでしょう。
パターソン、ヒル、バーグマン、チコ、ラナンというローテーションのイメージでスプリング・トレーニングに入るようですが、怪我なく、激しい競争を展開した末に、この形で開幕を迎えることが、ベストシナリオです。全体に層は厚くなっており、昨シーズンの二の舞は避けられると確信しています。