2010年4月30日金曜日

Bryce HarperのMakeupに関する論争

 今年6月の2010年ドラフトの最大の目玉が若干17歳のBryce Harperであることは以前に紹介しました

 まだ17歳ながら、飛び級して今季はCollege of Southern Nevadaに所属。成績はこちら(アップデートされていきます)で見ることができますが、4月30日までに47試合に出場して下記のとおりの驚異的な数字を残しています。

Bryce Harper (for College of Southern Nevada as of April 30, 2010)
47G 156AB 60R 21HR 59RBI 27BB 29K .410/.497/.917 15SB


 所属しているリーグあるいは対戦投手のレベルが高くないことから多少割り引いて数字を見る必要があり、昨年のStrasburgほどは実力的に抜きん出てはいないという意見もありますが、それでも、今年も全体1位指名権を持つナショナルズが回避することはだんだん難しくなってきていました。個人的には、スター選手になる可能性があり、指名・契約して欲しいという願いがだんだん強くなってきていました。

 ところが、ここに一石を投じたのが4月22日のBaseball ProspectusのKevin Goldsteinの記事。Harperのドラフト1位指名には4つの疑問があるとしているのですが、Number(契約金額)、Leverage(契約を拒否して学校に残る可能性)、Body(捕手としては大きすぎる体格)とともに示された4つめの疑問が「Makeup」でした。以前から言っているように、Makeupの訳は難しいのであえてそのままに、この部分を簡単に訳しておきます。

Makeup: この点を見逃してはならない。Harperのグラウンド上での能力を高く評価しないスカウトなどの野球関係者を見付けることは不可能だが、心の底でこの少年を嫌っていない者を見つけることも同じように難しい。あるスカウトは、これ以上ないほどの傲慢、異様なほどの特権意識、相手チームへの暴言を含むグラウンド上での素行が見られ、makeupという点で、これまでに見た中で最悪のアマチュア選手の部類に入ると言っていた。また、あるチームのフロント関係者に言わせると「彼はただただ悪い男だ。Joe Mauerとはほとんど正反対だ。」となる。(以下略)

 この記事を最初に読んだときに私が持った感想は、「何これ。信じられない。特定の選手、しかもプロではなくまだ17歳のアマチュア選手の人間性について、パブリックのメディアでここまで悪く書くとは。ひどすぎる。どういう背後があるんだろう。」というものでした。その時点では、このような記事に基づいて日本でのHarperの評判を下げることには荷担したくなかったので、日本語で情報発信することはあえてしませんでした(今のところ誰も記事にしていないようです。こんなマニアックな話を記事にするのは私くらいということですね・・・)。

 それから1週間。それなりに反論が出てきたので、併わせて記事にすることにしました。

 まず、MASNのByron KerrがCollege of Southern NevadaのTim Chambers監督にインタビューをしています。Chambers監督のコメントの中の一番のポイントとなるのは、次の部分。

「Harperはいい選手だ。確かに少し自信を誇示するようなところはあるよ。(中略)だけど彼は一生懸命プレーしているし、テレビをつければ、野球選手というのはそんな姿で映されているだろう?彼は、野球に自信を持っているけど、それを鼻に掛けるようなことはないよ。チームメイトのことも応援しているし。記者(Goldstein)は、彼のmakeupについて書く前に、10試合くらい続けて彼がプレーするところを見るべきだよ。」

 おっしゃるとおりです。この他にも、試合前にWillie Maysの本を読んでいたとか、相手チームやファンからのヤジに対して上手く対応しているといったHarperを擁護するポジティブなコメントを残しています。
  
 次に、NatsInsider.comのMark Zuckermanナショナルズの球団関係者への取材を元に記事を書いています。(ところで、以前、彼についてこんな記事を書きましたが、現在はフリーランスの身分のままですがCSNwashington.comに記事を提供して給料をもらっています。良かった良かった)。この球団関係者のコメントが直接引用されている部分としては、以下のとおり。

「彼が自信を持っているかって?そうだろうね。彼が生意気かって?そうだろうね。彼がいつもグラウンド上で自分が一番の選手だと思っているかって?そうだろうね。だけど、いい選手で自分自身についてそう思っていない選手がいたら教えてくれよ。」

 思わず笑っちゃいました。このZuckermanの記事によれば、Roy Clark GM補佐を中心としたナショナルズのスカウトチームは既にHarperの人間性についての検討を済ませており、makeupに関しては特に懸念は持っていないという結論を出しているとのことです。

 安心しました。6月7日のドラフトまであと2か月を切っています。果たしてナショナルズは全体1位でHarperを指名するのでしょうか。是非、行ってほしい。


PS. 最初に私が勘ぐった「背後」は未だに不明なまま。プロスペクトの評価に関しては定評のあるBaseball Prospectus、Kevin Goldsteinですが、今回の記事で私の中での信用は揺らいでいます。

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