2009年9月10日木曜日

Hunt for Bryce Harper !

 今年もこの季節がやってきてしまいました。ドラフト全体1位指名権争奪戦。今年「も」なところが悲しいですが、ま、仕方ない。事実は受け止めましょう。

 昨季は、9/18終了時点から開始したこの記事ですが、今年はマイナーのプレーオフもなくなってしまったので、ちょっと早いですが始めます。いや、見てもらえば分かるように、むしろ遅すぎたかも知れないと気付き、また悲し。

 昨季、記事を書き始めた08/9/18終了時点。

W L 勝率 L10 St
Seattle 57 95 .375 - 1-9 L8 10
Washington 58 95 .379 0.5 3-7 L2 9
San Diego 58 95 .379 0.5 3-7 L2 9


 今季、9/10終了時点でどうかというと・・・・

W L 勝率 L10 St
Washington 47 92 .338 - 1-9 L2 23
Kansas City 54 85 .388 7.0 5-5 W3 23
Pittsburgh 54 84 .391 7.5 1-9 L3 24
Baltimore 56 83 .403 9.0 3-7 L2 23


 なんじゃこりゃ・・・。両リーグのワイルド・カード争い(AL:Boston Leading 2.0G、NL:Colorado Leading 4.0G)より大差。もう決まったようなもんじゃないか・・・。昨季よりさらに勝率が低いことを再認識。ナショナルズを除けば昨季とは顔ぶれが変わっていることにも、また悲しみを覚えます。


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 それはともかく、今年のタイトルは"Hunt For Bryce Harper"



 ご存じない方のために紹介しておきますと、Bryce Harperは、1992年10月1日生まれの現在16歳。ラスベガス出身。右投げ左打ち。捕手が本職ですが、投手をやらせても最速96マイルを投げ、強肩ということもあり遊撃手や三塁手あるいは外野も守れるとのこと。しかし、最も評価が高いのはやはり打撃。2008年には、全米代表(U-16)としてパン・アメリカン大会に出場し、全8試合で4本塁打、.571/.676/1.214(OPSじゃないですよ、SLGです)というとんでもない数字を残しMVPに選出。570フィート(約170m)のホームラン(確認しておきますが、まだ16歳ですからね)をはじめ逸話は数え切れないほどあり、李啓充さんのこちらの記事には12打数12安打11本塁打という冗談のようなエピソードも紹介されています。同じキャッチャーのJoe Mauerをはるかに上回る素材といわれ、Ken Griffy Jr.やA-Rodとの比較が適当と言われています。

 とにかく、ドラフトにかかれば全体1位指名が確実な、圧倒的な、今年のStephen Strasburgと同格かあるいはそれを上回る存在だということです(両者が同じ年にドラフトにかかったらどちらが先に指名されただろうかという論争はあちこちで見ます・・・)。

 そんな、Harperの名が一躍全米に知れわたったのは、Sports Illustrated(2009年6月8日号)の表紙に抜擢されたことによります。

 表紙には、Harperの写真とともに、BASEBALL'S CHOSEN ONE(野球に選ばれし者)、570FOOT HOME RUNS96MPH FASTBALL16 YEARS OLDという言葉が並んでいます。Tom Verducciさんの記事のタイトルは、「Baseball's Lebron」とあり、NBAクリーブランド・キャバリアーズのLebron James選手と比較するほどの扱いをしています。といっても、私はNBAにはあまり詳しくないので、Jamesがどれほどの選手かはよく認識していなかったりしますが(笑)。
  
 Harperは、何回も書いていますがまだ16歳。この夏までは、Las Vegasの高校2年生でしたから、最短で、高校を卒業する2011年ドラフトで指名されるものと考えられていました。ところが、ここに登場するのが、そう予想通りですね、Scott Borasです。アドバイザーBorasの提言に従い、Harperは、なんと「飛び級」試験を受け、これを突破(頭もいいらしい)。この秋からCollege of Southern Nevadaというコミュニティ・カレッジに入学してしまいました。コミュニティ・カレッジは2年生の短大のようなものですが、ここでプレーする選手は1年生が終ったところでドラフト指名を受けることができるのです。これにより、来年6月、17歳にして、ドラフト指名を受けることができることになりました(もちろん怪我なく順調に行ったらという前提ですが)。そうか、その手があったか、という感じです。Borasの天才ぶりには本当に感服します。

 そんなこんなで、来年のドラフト全体1位指名権争奪戦が、Hunt for Bryce Harperとなるわけです。

 ところで、この1年は、たかが1年と思われるかもしれませんが、実は重要な意味を持つ可能性があります。というのは、ドラフト全体1位指名を受けた選手が何百万ドル(Strasburgは1500万ドル以上)の収入を得られるという制度が、来年で終る可能性があるためです。ドラフト制度や契約金などについても規定している現行のMLB労使協定が2011年中に有効期限を迎えるため、来年中には再交渉が行われる見通しであることから、現行協定の下で行われるドラフトは来年が最後であろうという見方が有力です。新協定の内容はいろいろと噂されていますが、現下の経済情勢を受けて、選手会側が強い抵抗を示してきたサラリーキャップ制度(NLF, NBA, NHLでは導入済み)でさえ導入が議論されると言われており、(労働組合員でない)ドラフト選手に対するボーナスに厳格な上限が定められる可能性は十分あると思われます。Harperが1年早くドラフトにかかるということは、収入で何百万ドルも差がつくことを意味するのです。 Borasのことだから、そこまで見越して助言したものと思われます・・・。

2 件のコメント:

haus さんのコメント...

Bryce Harperは何度か記事を見かけたことがありましたが、16歳ということでドラフトのことは全然頭に入っていませんでした。これはこれはビッグな情報を教えていただき感謝感激です。

Borasの手口(って悪巧みみたいですね)は労使との兼ね合いであれば辻褄が合います。一点、疑問というか私にはわからない所があって、学生生活を一年残してドラフト指名された場合、もう一年待つということで指名球団の選択肢を広げる考え方はありますか?新協定次第だとは思いますが、Strasburgのように「日本の球団で」なんてカードをチラつかせるよりは現実的かと思いまして。

estoppel さんのコメント...

どうでしょうね。

一年待ってFA選手になれるのであればそういう選択肢をとるかもしれませんが、新協約のもとでも、おそらくそれはできないでしょう(今はもちろんできない)。

日本球界行きの件もStrasburgの件で噂に上がったので、新協約では穴をふさいでくるでしょう。ま、ボラスが、また別の抜け道を見つけるかも知れませんが(笑)。

現状では、高校生は大学に行くという選択肢があるわけですし、CCの選手も4年生大学に編入することは極めて簡単なのでそういう選択肢があります。現にそういう選手はいます。

HarperがCCの1年生で指名された場合、2年生になる、あるいは4大に編入するなどをカードに交渉することは十分考えられますが、来年6月のドラフトの場合は、1年待ってしまえば新協約ができてしまって契約金がぐっと下がる可能性がありますので、基本的に契約しようとするのではないかと予想します。

ん?そうすると、もう来年のドラフトから、今年に比べると選手側の交渉力は弱まってしまうことになってしまいますね・・・。

ちなみに、ご承知かと思いますが、大学生にしても、今年のStrasburgもそうですが、主要な選手は3年生(Junior)で指名されています(大学は中退する選手もいれば、席をおいておいて野球のない季節に授業に出たりレポートを出したりして学位を取る選手もいます)。4年生(senior)に進級するという選択肢もあるわけですが、そういう選択肢は取られていないのが一般的です。指名拒否して、あるいは3年生のときは指名されなかったけど4年生で指名された選手が、弱い交渉力しか持たないというのが一般的な理解です。就職浪人はしたくないですからね・・・。(だから、ボラスのクライアントはもめてもほとんどの場合契約に至っているわけです)

私が思ったのは、こんなところです。