2009年3月2日月曜日

Esmailyn Gonzalez事件のその後

 3月1日に遂にJim Bowden GMの辞任という事態にまで至りましたが、まずは、出張中の展開を簡単に、まとめておきます。それ以前の経緯は、こちらこちら
 
2月20日
 元Esmailyn Gonzalez(本名Carlos Alvarez Daniel Lugo、以下Lugo)の現在の代理人(契約した2006年当時とは異なる)がLugo本人と電話で話したそうです。本人の発言の引用はありませんが、代理人によると、深い悔恨を示すとともに重圧から解放されたとも語っていたとのことです。

2月21日
 Jose Rijo GM特別補佐がチームを離れ、ドミニカに帰国。Lugoの契約当時の代理人のBasilio Viscainoとは旧知の仲で今回の事件への深い関与が噂されていました。コーチとしてメジャーのスプリングトレーニングに参加していましたが、球団と話し合って離脱を決めたようです(このときは、Rijo本人もそのように行っていましたが、後日、解雇された後、この離脱は球団に強いられたものであったとRijo本人が修正しました)。
 Rijo自身は事件への関与を否定し、”Everyone else will find out about truth in time.”とコメント。
離脱の理由については、”I just feel like I ‘m too much of a distraction right now. I want the team to be able to concentrate.”と発言するとともに、帰国には病気の母に会いに行くためでもあるとしていました。

2月22日
 LugoのbusconであったBasilio ViscainoがESPNの取材に応えました。
 まずこのbusconというのが何者かということですが、 英語ではstreet agentと訳されたりしています。ドミニカ共和国では周知のとおり野球が盛んで少年たちが小さい頃から野球をしているわけですが、そんな野球少年たちの中から、才能のある選手を見つけ、コーチをしたり、それこそ生活の面倒をみたりして、育て、そしてメジャーリーグ球団との契約の仲介をするという、代理人というかブローカーのような人々のことです。ドミニカではかなり一般的な存在のようですが、報酬がその選手とメジャー球団との契約金の2割とか3割とか高いことと、正規の報酬以外にキックバックなど不透明な金の流れがささやかれ、どうしても怪しさをぬぐいきれない存在です。
 さて、そのViscainoのコメントですが、正直驚かされました。全く知らなかった、この事件はLugoとそのいとことによって仕組まれたものだと主張しています。最近Lugo本人とも話したとして、”He(=Lugo) said he did it because he thought if he didn’t change his identity he would not never sign.”とコメントしています。仮にこの主張が事実であるとすれば、伝えられるところによれば、ViscainoはLugoに初めて会ったとき、13歳を17歳と信じたということになります。まさか、そんなことはあるまいに・・・・・。しかも、またいとこだし(笑)。
 ひどいコメントです。全く信用できません。

2月23日
 この件に関しては、Kasten球団社長から発言を控えるようにと言われていたJim Bowden GMが初めてコメントを出しました。
 “I’m innocent of any wrongdoing, and besides that I d0n’t have any comment.” 
 これまで、あまりにも情けない話なのであまり触れないで来ましたが、Bowdenが問われていたのは、Lugoの件だけではなく、より広範なラテン系選手の獲得に関する不明朗な資金の流れに関する疑惑。既にFBIによる捜査が進んでおり、昨年夏にはBowdenもRijoも事情聴取に応じています。FBIによる捜査の対象となっているのは具体的にはレッズのGM時代の件のようですが、Lugoの事件も構図というか構造的には基本的に同じです。
 それにしてもこういうプレーと関係のないところで大騒ぎになるというのは、それだけでもチームには有害。さすがにこれまでBowdenを庇ってきたオーナーグループも解任の意思を固めたとの噂もあります。

2月25日
 Washington Postのビートライターは現在Chico Harenという記者が務めていますが、昨年のスプリングトレーニングまで(2006年のLugoの入団当時を含む)担当していたBarry Svrlugaがこの事件に関連して復帰し、2006年以来となる、ドミニカ共和国への上陸取材を敢行し、Lugo本人の取材で面白い記事を書いています(元記事はこちら)。興味深い点は以下の通り。

・“I feel bad, really bad. I feel bad because of what I did.”と基本的に自分(とインタビューにも同席していたいとこ)の非を認め、他に関与した者や資金の流れについてはコメントを拒否。ただし、2006年の取材時に父親と紹介した男が実は父親ではなかったことを告白。とはいえ、実の父親にも、母親にも会えずに取材は終わっています。
・Esmailyn Gonzalezというのが遠い親戚の名前であることも判明しました。
・一方、Lugo自身の暮らしぶりは高級車を2台(うち1台はホンダ・アコード)買ったという以外、家も変わっておらず、つつましい(というか貧しい)暮らしぶりだったようで、140万ドルがどこに行ったのかははっきりしないままです。
 
2月26日
 Jose Rijo GM特別補佐を解雇。
 また、同時にRijoがドミニカ共和国で経営し、ナショナルズのマイナー施設となっていた野球アカデミーも閉鎖することが発表されました。この野球アカデミーがそのままドミニカサマーリーグのチームだったわけですが、14人の選手を解雇して昨季2チームだったのを1チームに減らすことになりました。スタッフも、投手コーチとトレーナー1人を除いて全員解雇。監督にはドミニカウィンターリーグのLicey Tigersの監督だったFernando Raveloを任命。当然ながら本拠地も変更しました。まさに人心一新という感じです。
 なお、これらの判断を行ったのは、以上の発表をマスコミに対して行ったKasten球団社長と、現地に飛んでRaveloとの面接や新本拠地の選定などを行ったMike Rizzo GM補佐のラインであり、Bowdenの出番はほとんどありませんでした(ただし、Rijoへの最終的な解雇通告はKastenの見ている前でBowdenが電話で行った模様)。一方で、後任GM探しが始まったとの報道もありました。

2月27日
 ドミニカ共和国から戻ったMike Rizzo GM補佐がマスコミのインタビューに答えました。前日のKasten社長からの発言内容からさして付け加えることはありませんが、この席にBowden GMは同席していなかったようです。

2月28日
 スプリングトレーニングの試合にBowden GMが姿を見せず、いよいよ解雇間近か、との報道。

 以上の経緯を経て、3月1日、Jim Bowden GMの辞任という展開にいたりました。

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